aptX HDやLDACなど、ハイレゾ対応コーデックのワイヤレスイヤホンを持っていても、必ずしも聞こえる音がハイレゾ音質になるわけではありません。
スマホとワイヤレスイヤホンでハイレゾ音質の音を聞くには、越えるべきハードルがあります。
スマホとワイヤレスイヤホンでハイレゾを聴く条件
ハイレゾの音源を使う
まず、音源がハイレゾである必要があります。
「音源」とは音のデータ、「ハイレゾである」とは音データのビットレートが24bit/48kHz以上であることを指します。詳しい説明はさておき、「24bit/48kHz」の数字が大きい方が音質が良いと思ってください。
たとえるなら、ハイレゾでない音源はドット絵で、 ハイレゾ音源は3DCGで描かれた絵。いくら解像度の高いモニターで映しても、ドット絵はドット絵でしかありません。
それと同じで、ハイレゾを聞くにはそもそも音源がハイレゾであることが前提になります。
ハイレゾ対応のスマホを使う
次に、スマホ自体がハイレゾの処理に対応していなければなりません。
なぜなら、音源を再生するのはスマホのハードウェアやOSですし、その音をイヤホンに伝えるのはスマホのBluetooth通信モジュールだからです。
たとえるなら、いくらいい音譜(音源データ)を持っていても、演奏者(スマホ)が下手くそならダメな音しか鳴らないのと同じ。
特に使えるコーデック(後述)がハイレゾ対応してるかは見落としやすいポイントです。
ハイレゾ対応のアプリを使う
くわえて、音楽再生アプリ側でもハイレゾ対応している必要があります。
音楽を再生するときは音源データを実際の音にコンバートする処理を行うのですが、その処理の一部に音楽を再生するアプリのモジュールを使うからです。
たとえるなら、音譜(音源データ)と演奏者(スマホ)がいくらよくても楽器(アプリ)がダメだと良い音なんて鳴らないのと似ています。
ハイレゾ対応のコーデックを使う
まだあります。コーデックです。
コーデックとは、スマホとワイヤレスイヤホンがBluetooth経由で音のデータを通信する規格。AACとかaptXとかのことです。
aptX HDやLDACなどのハイレゾ対応したコーデックを使わないと、スマホからワイヤレスイヤホンに音データを飛ばすとき、せっかくのハイレゾ音源が圧縮されてしまい、音質が損なわれます。
たとえるなら、ハイレゾ対応コーデックなら演奏者と自分の間に障害物がない状態、ハイレゾ非対応のコーデックだと演奏者と自分の間に敷布団が挟まっている状態、と考えてください。
ハイレゾを十分表現できるワイヤレスイヤホンを使う
そしてイヤホン本体の表現力も、ハイレゾを楽しむために重要です。
たとえるなら、めちゃくちゃキレイな音楽でも、スピーカーがダメだと聞くに堪えないダメ音質になるのと同じです。
「え、ハイレゾ対応のワイヤレスイヤホンならそれなりの音質出て当たり前だよね?認証マークもあるし」と思うかもしれませんが、違います。
「ハイレゾ対応」の認証は、あくまで音のデータを所定のレートでイヤホンに伝達できる証であって、イヤホンの音質を保証するものではありません。
経験上、5000円前後でハイレゾ対応のワイヤレスイヤホンは気をつけたほうが良いです。
(ストリーミングの場合)通信速度・通信量を確保する
最後に、通信速度も影響します。
ハイレゾ音源はデータ量も大きくなるもの。そのため、データダウンロード待ちがないようにストリーミング再生するには
- 通信速度が高速であること(Amazon Music HDの推奨は1.5Mbps~)
- 高速データ通信量が十分に確保されていること(ハイレゾは1曲3分10MB~)
の2点が必須です。
特に格安SIMを使っている人はデータ通信量に注意が必要。ハイレゾ音源はデータが重く、手元の実測だと20分で480MBも通信しました。
事前に音源をダウンロードしておくなら気にしなくて良いですが、オンデマンドでストリーミング再生したい場合は留意しましょう。
[amazon_music]など一部アプリでは、ダウンロード待ちを避けるため、通信が遅いと自動的に音源のビットレートを下げる機能があります
1つでも満たされなければ「ローレゾ」になる
これら条件はすべてANDです。すべてを満たさない限り、あなたの耳にハイレゾの音は届きません。
仮にあなたがハイレゾ対応コーデックの使えるワイヤレスイヤホンに買い替えただけで「音質よくなった!」と思ったとしたら、それは単なる気分です。
音源、スマホ、アプリ、コーデック、イヤホンのスピーカー、そして場合によっては通信速度。どこか1つでも「ローレゾ」があったなら、あなたの耳に届く音は「ローレゾ」になります。
まとめ:ハイレゾ道は深い
正直、これら条件を全部満たすのは結構キツいもの。
ハイレゾ対応コーデックが使えるスマホとワイヤレスイヤホンとなると、選択肢が限られます。
データ通信も、ハイレゾ音源のストリーミングだと実測20分で480MBほど使ったので、月3GBなどの格安SIMだと一気にスッカラカンです。
・・・こういった制約を乗り越えてなお、スマホとワイヤレスイヤホンでハイレゾを楽しみたい。そこまでやる価値を見いだせる人のみ頑張ればいいでしょう。正直、趣味の世界です。
だって多くの人にとって、外出中に外の雑音と一緒に「ながら」で聴くぶんには、ハイレゾとハイレゾ以外の違いなんて、ほとんど気づかないと思うので。
以上「スマホとワイヤレスイヤホンで正しくハイレゾを楽しむための条件」でした。