提供:Cubbit
Cubbit様のご厚意で、同社サービス「Cubbit」に使う装置「Cubbit Cell」をご提供いただきました。
Cubbitは、いわゆるクラウドストレージ。BoxやOneDrive、Google Driveと似たサービスです。
違うのは、データが分散保存される点。全世界に散らばったCubbit Cellに暗号化&裁断されたデータが分散保存、それらを統合してファイルとして扱えるのは自分だけ、という形。
一言で言うと、ユーザ参加型の秘密分散クラウドストレージ、というわけです。
仕組みとしておもしろく、使い勝手は良好、かつコストも大手クラウドストレージと遜色がないので、ぜひチェックしてみてください。
Cubbitが気になった理由
ものすごい個人的な理由ですが、秘密分散ストレージの実サービスを使ってみたかったからです。
実は、学生時代の同僚が秘密分散ストレージの研究をしていました。2010年初頭のことです。
それが実サービスに進化して展開された。それだけで使ってみたいという気持ちになりました。
いわゆる邂逅です
Cubbitの概要
Cubbitは、サービスとしてはクラウドストレージに属するもの。
他との違いは、その実現形式にあります。
- クラウドストレージ:
ストレージの実物はサービス提供企業が一元管理 - Cubbit:
ストレージの実物は、ユーザ全員で分散管理
Cubbitの分散管理は、具体的には以下の形。ユーザ全員がサービス提供者になります。
- ユーザはCubbit Cellと呼ばれるデバイスを購入する
- 全ユーザのCubbit Cellが1つのストレージプールとしてふるまう
- ユーザはそのうち所定の保存容量を割り当てられて利用する
- データの実物は裁断・暗号化された状態で全ユーザのCubbit Cellに分散保存
このような仕組みのため、サービス仕様としては、
- Cubbit Cell代金を一括先払い。その後は無料で利用継続
- 自宅のCubbit Cellが壊れてもデータは消失しない
という特性を持ちます。
注目ポイント
- 70カ国以上の稼働実績
- 1億2千万以上のP2P接続(それなりの数のCubbitセルが稼働中)
- Cubbitさえも保存データにアクセス不可能な高セキュリティ
- 2千万個のファイルを取り扱うなか、データ破損ゼロ
- デスクトップ同期用のアプリ(スマホアプリも開発中)
仕様・スペック(Cell)
- CPU:デュアルコアARM Cortex A53プロセッサ
- メモリ:1GB DDR4
- 電源:12V DC
- USB:3.0 USB-Ax1
- ネットワーク:ギガビットイーサネットポートx1
- サイズ(mm):142x160x56
Cubbit本体のレビュー
それではレビューしていきます。
外観・デザイン:シンプルだが意外と分厚い
六角形のデザインや良し。
ただ、かなり厚みがあるのが気になります。存在感がっつり。
側面に各種ポートがまとまっています。
LANポートは、自宅のWiFiルーターなどにLANケーブルを直接接続して使うためのもの。
「無線じゃないんだ」と思いましたが、
- そこそこのデータ転送を伴う
- Cubbit Cell自体がサービスの一部なので安定性は大事
という事情で有線になっているのでしょう。
USBポートは、手持ちのディスクを追加することで容量をアップさせるためのもの。
以上見ると、Cubbit Cell自体は単なる「電源とLANつきのストレージ」であり、電源オンオフすら不要。
接続したあとは放置しておけば良いようです。これはこれで手間がかからず便利そう。
重さ・大きさ:18cmの片手鍋くらい
大きさも分厚さも、イメージ的に18cmの片手鍋うに近いです。つまり、結構かさばります。
512GBのストレージと考えると、外付けのポータブルSSDと比べるとだいぶ大ぶり。
おそらく、
- SSDと違ってLANポートがある
- 長期間の安定稼働が前提である
- 数ユーザで共有される
など、Cubbitならではの特性を考えてこの設計になっているのでしょう。
保証:30日無料返品+4年間長期保証
Cubbitのセルは
- 購入後30日間は無料返品可能
- 購入後4年間の製品保証
がついています。
4年間使えるとなると、月額換算では以下の通り。もちろん4年以上使えば月額はどんどん下がります。
- 512GB(40,700円)→847円/月
- 1TB(48,900円)→1,018円/月
- 4TB(68,700円)→ 1,431円/月
- 8TB(116,400円) → 2,425円/月
これってコスパいいの?は後述します。
Cubbitサービスのレビュー
では、Cubbitサービス本体のレビューです。
- 初期セットアップのスムーズさ
- 機能ラインナップ等の使い勝手
- ファイル同期スピードやエラー発生頻度
を中心に見ていきます。
初期セットアップ:少し手間がかかる
Cubbitサービスを使うには、Cubbit Cellの接続後に初期セットアップが必要です。
そこそこステップが多く、かつ英語なので、細かめに紹介していきます。
アカウント登録
蓋の裏に書いてあるアカウント登録用URLにアクセスし、以下手順に従って進めます。
アプリのインストールとセットアップ
インストーラを「管理者で実行」します。
同期用フォルダのパスを指定して、あとは「OK」連打で大丈夫。
初期セットアップ中に、同期用のフォルダが作られます。
その後、再起動を求められるので従います。
再起動後は、通知欄にCubbitアプリが常駐します。
アプリから「Claim your Cubbit Cell(Cubbit Cellを登録)」すれば準備完了です。
ファイルの保存と同期:シームレス
ローカルの同期用フォルダにファイルを保存すれば、裏で勝手に同期処理が走ります。
Webアプリに保存したファイルも、全自動でローカルフォルダに同期されます。
使い勝手はシームレス。特段問題を感じません。
具体的は様子は以下のとおり。
ローカル環境 → Webアプリ
エクスプローラで同期用フォルダにファイルを置くと、更新マークとともに同期が始まります。
チェックマークに変わったら同期完了。Webアプリにも反映されました。
Webアプリ → ローカル環境
Webアプリにファイルをドラッグ&ドロップすればアップロード完了。
このままなにもせずともローカル環境に同期されるはず。
しかし・・・
ローカル環境の同期が失敗しました。
ただ、これは初期セットアップ直後にときどき起こる現象のようで・・・
PCを再起動したら、ちゃんと同期されました。
Cubbitアプリは管理者権限を使うので、念のためインストール後はPC再起動したほうが安全そうです。
同期スピード:大きなファイルは要注意
いくつかのケースで試してみた結果、
- 100KB前後:ものの数秒
- 100MB前後:数分
ファイル容量によって同期スピードは異なるようです。
特にファイルサイズが大きくなるほど同期スピードの遅延が目立ちます。
これは当たり前。ファイルが大きいほど
- データの裁断・暗号化・復号化処理にかかる時間
- Cubbit Cellへデータを分散配置・集約統合する通信時間
など、同期のあらゆる側面で時間がかかるためです。
一方、同期に時間がかかるということは、クラウドストレージでよくある
- Cubbit同期フォルダ内の大規模ファイルを直接開いて編集
- 保存ボタンを押した後、同期完了前にPCをシャットダウン
- 他PCからWebアプリ経由でファイルを参照→NG
というケースにぶつかる可能性が高いことになります。
サービスの仕組み的にしょうがないですが、用途は絞られそうです。
ファイル共有機能:必要最低限
アクセスキーが必要な「Private Link」
BoxやOneDriveのように共有リンクを発行可能です。
種類は2つ。
- Public Link(URLを知っていれば誰でもダウンロード可能)
- Private Link(URLに加えパスコードを知らないとダウンロードできない)
ただ、リンクの有効期限設定や、特定のCubbitアカウントのみにアクセスを許可するなどの制御機能はありません。
とはいえ、これらの機能は主に業務用途で必要となるもの。個人用途ならさして問題にはなりにくいでしょう。
同じ操作が、ローカルの同期用フォルダ内のファイル右クリックでもできます。
実際はWebアプリの共有リンク作成画面(前出)に飛ばされるだけです。
保存容量の共有:おすそわけ感覚
Cubbitにはアカウントを4つ登録でき、それぞれ容量を割り当てることができます(招待のようなもの)。
自分だけでは容量を使い切りそうにないとき、他の人へ容量を分け与えられるのです。
招待した人はCubbitへのアカウント登録が必要ですが、あまりハードルは高くないので問題ないでしょう。
コスパは?他クラウドストレージと価格比較
わかりやすくするため、容量1TB前後のケースで比較します。
Cubbit | Box | OneDrive | Google Drive | |
---|---|---|---|---|
保存容量 | 1TB | 無制限 | 1TB | 2TB |
付帯 サービス | なし | なし | MS Office | なし |
月額料金(月払) | 1,018円* | 1800円 | 1,284円 | 1,300円 |
月額料金(年払) | 1,018円* | 1710円 | 1,082円 | 1,083円 |
拡張性 | ストレージ 増設可(予定) | 容量無制限 | なし | なし |
Cubbit、なかなかバランスの値段帯です。
ではCubbitが勝てるケースを深堀りしてみます。
Cubbitが勝てる条件は、Cubbit Cellが4年以上動くこと
特性を比較すると、
- Cubbitは、自前でストレージ増設可能、かつ長く使えば月額コストは下がる
- Boxは、容量が無制限
- OneDriveは、MS Officeアプリが付帯
- Google Driveは、容量がそもそも2TB
と、それぞれ強みを持っています。
Cubbitが他に勝てるのは、Cubbit Cellの利用期間が4年以上になるケース、と言えそうです。
ストレージ自前追加は追加コスト投入が必要で比較が成り立たないので割愛します
実際、Cubbit Cellは4年以上使えるのか
ではCubbit Cellは4年以上使えるのか?ですが……
壊れる契機は限定できる
接続したら放っておくだけなので、壊れる契機は
- 経年劣化
- 落下
- 熱暴走(埃の目詰まりなど)
くらい。
置き場所を気をつけつつ、半年に一度くらい掃除してあげれば壊れる契機は「経年劣化」のみに限定できそうです。
経年劣化は保証でケアされている
Cubbit Cellには4年間の保証がついています。
通常利用範囲内の故障なら保証の範囲内です。
なので4年未満で壊れた場合、修理や新品交換など対応してもらえるでしょう。
以上をもって、Cubbit Cellは少なくとも4年は使い続けられる(=コスト的には他社とトントンになることが保証される)ことになります。
Cubbit Cellは要は「UIがないPC」なので、減価償却期間的にも5年は持つはず
実際に使ってみた感想
初期セットアップ後、2週間ほどバックアップ用ストレージとして使ってみました。
リアルタイムにファイルを出し入れするケースではないので、データ同期速度は度外視で、良かったところ、悪かったところを書いていきます。
良かったところ
- あまりネットワーク帯域を取らない
- 初期設定後はつなぎっぱなしでOK
- 壁掛けの網棚に乗せられる程度の重さとサイズ感
- 4年間の長期保証によるコスパ的な安心感
- Cubbit Cellが壊れてもデータがロスしない安心感
いろいろ書きましたが、いちばん良かったのは、ネットワーク帯域をあまり占有しなかったこと。
Cubbit Cell同士の通信が激しんだろうなあ、ネットワークの帯域食いつぶさないかなあ、と思っていましたが、杞憂でした。
Cubbit Cell導入後も、余裕でAmazonプライムビデオの4K動画や[amazon_music]のUltra HD楽曲が快適にストリーミング再生できています。仕事のWeb会議も影響なし。
普段目につかない場所に置いているのもあいまって、ただただクラウドストレージを使っているような感覚で使えています。
悪かったところ
- 初期セットアップ直後はファイル同期に失敗することがある
- 掃除嫌いだと定期メンテ(Cubbit Cellの埃取り)が辛いかも
- 若いサービスなので長期継続されるかは未知数
2週間使った範囲では、気になったのは初期セットアップ直後の一時的な不具合のみで、正直あまり悪いところは見つかりませんでした。
が、長く使うことを考えると部屋掃除をマメにやるタイプじゃなきゃ辛いかもしれません。埃が溜まったCubbit Cellを定期清掃しないと4年持つかどうか。その意味で、掃除が苦手な人には向かないかもしれません。
また、Cubbitに限らずどのサービスにも言えることですが、サービス開始から日が浅いため長期継続されるかは未知数。とはいえ、公式FAQに「最悪の場合はCubbit Cell同士を連携させるプログラムをオープンソースにする」と宣言されていますので、ある程度リスクヘッジはされていると考えても良さそうです。
In any worst-case scenario, we would release the coordinator code open source, so that anyone can host it and continue to use Cubbit — without losing any data and guaranteeing the continuation of the mission of private, distributed and accessible cloud storage and services for all!
出典:help.cubbit.io
Cubbitはこんな人におすすめ
まとめ:おもしろいサービスを大手同等の価格で
総合評価:
おもしろい&使い勝手が良い先鋭的なサービスを大手とトントンのコストで使えること自体に価値があると思います。
もちろん、多くのユーザーのCubbit Cellが長期稼働することを前提としたサービスモデルと、売り切り型のCubbit Cellの売上に依拠した収益モデルからして、長期的なサービス継続が可能かは不透明です。その意味で-★1しました。
ただ、Cubbitリリースノートでは積極的にサービス開発がされている2022年2月現在、上記収益構造の次を行くサブスク型のクラウドバックアップサービスが海外では展開されている点から、リスクヘッジは志向されているようです。
若いサービスなので今後に期待しつつ、使い続けていきたいと思います。
以上「Cubbitレビュー | ユーザ参加型の秘密分散クラウドストレージは使い勝手も良好だった」でした。
(参考)Cubbit Cell不要の月額サービスもあります
「わざわざCubbit Cellを買わないといけないの?」
という人向けに、購入不要の月額サービスもラインナップされています。
比較可能な容量で料金のみを他社サービスと比較すると、
- 100GBなら他社
- 1TBの短期利用ならCubbit Cloud
- 1TBの長期利用(4年以上)ならCubbit Cell
が、だいたいの傾向です。詳細は以下。
Cubbit Cell | Cubbit Cloud | Box | OneDrive | Google Drive | |
---|---|---|---|---|---|
100GB (年払の月額) | N/A | 約400円 | 1,200円 | 224円 | 209円 |
1TB (年払の月額) | 1,018円* | 約900円 | 1,710円 | 1,082円 | 1,083円 |
こちらもぜひチェックしてみてください。