提供:Human Things
メーカー様のご厚意で、クラウドファンディング中の完全ワイヤレスイヤホンGENKI Waveformを先行レビューさせていただけることとなりました。
GENKI Waveformは、形は完全ワイヤレスイヤホンなのですが、実際は
- 完全ワイヤレスイヤホン
- Bluetoothトランスミッター
- デュアルストリーム
の3つの動作モードを備えるマルチデバイスです。
ちょっとわかりにくいと思うので、本記事では、
- それぞれのモードでなにができるの?
- おすすめの使いみちってなに?(GENKI Waveformの良さが活きるのはどんなケース?)
- そもそも音質とか電池とか、イヤホンとしての基礎力はどうなの?
の観点からご紹介していきます。
GENKI Waveformの概要
その他詳細はクラウドファンディングのページが一番詳しいのでそちらをどうぞ。
GENKI Waveform、3つのモードとその用途
GENKI Waveformのモードを解説するにあたって理解しておいていただきたい登場人物は以下。
- 音源1、音源2:音楽や音声のデータを送り出すもの
- Waveformケース:データの中継地点
- Waveformイヤホン:実際に音を鳴らすスピーカー
3つのモードによって、これら登場人物のつながり方がそれぞれで違います。1つずつ解説していきます。
1. 完全ワイヤレスイヤホンモード
1つ目は、単純に完全ワイヤレスイヤホンとして利用するモードです。
コーデックはだいたい、iPhoneならAAC、AndroidならaptX系、PCならSBCです。(実際はスマホ・PCに搭載されているチップによります)
仕組み
特に解説は不要でしょう。
使いみち
普通に完全ワイヤレスイヤホンとして使えばOKです。
制約
特に気にすべき制約はありません。
普通の完全ワイヤレスイヤホンです。
2. Bluetoothトランスミッターモード
2つ目は、有線出力しか対応していない音源をBluetooth化するモードです。
仕組み
音源とGENKI Waveformケースの間は有線。端子は、GENKI Waveformケース側にUSB-C経由で音声データが入力可能ならもう片方はなんでもOK。試した限り、USB-C、USB-A、3.5mmヘッドフォンジャックで正しく動作しました。
GENKI Waveformケースとイヤホンの間のBluetooth通信で使われるコーデックはaptX Adaptiveです。
使いみち
おすすめの使いみちは、プレステやスイッチでのイヤホン無線化です。
- プレステ:そもそも無線化には特定機種のヘッドホンが必要→GENKI Waveformでも無線化可能
- スイッチ:BluetoothコーデックがSBCのみ対応で遅延が大きい(220±50ms)→GENKI Waveformで遅延を50〜80msに抑制可能
これ以外でも、USBや3.5mmイヤホンジャックで音声出力できるデバイスならなんでも対応可能です。
制約
GENKI Waveformのケースは、一般的なBluetoothトランスミッターと違って、Waveformイヤホン以外のBlutoothイヤホンやBluetoothスピーカーと接続できません。
そういうものなんだ、と諦めましょう。
他と接続できたら正真正銘の神デバイスでした
3. デュアルストリームモード
3つ目は、2つの音源からの音を同時にイヤホンから再生するモードです。
GENKI Waveformだけのオンリーワン機能でもあります。
仕組み
2つの音源がGENKI Waveformケースで合流・統合され、1つの音としてGENKI Waveformイヤホン本体に流れてきます。
GENKI Waveformケースと音源の接続は、片方は有線、もう片方はBluetooth(SBCまたはAAC)です。
ちなみにイヤホンのマイクからの入力も音源1・2の両方に入力されます。
実際の使いみち
おすすめの使い道は以下3つ。
- スマホアプリでボイチャしながらPCやプレステ、スイッチなどでゲームプレイ
- リモートワークで、PCとスマホで別々のWeb会議に出席
- PCでWeb会議に出つつスマホから気分のアガるBGMをこっそり再生
特に1つ目がGENKI Waveformが主に想定する使い方です。ゲームコンソールと有線接続、スマホと無線接続しつつ、GENKI Waveformイヤホンを装着してゲーミング。ボイチャとゲームの音が両方一気に聞こえるので、まるで同じ部屋でゲームしている気分が味わえる、というわけです。
また仕事での使いみちとして、2つのWeb会議に同時出席しないといけないケースでデュアルストリームモードが活躍します。個人的にはよくあるケース。
くわえて、つまらないWeb会議にゲーム戦闘曲や逆転裁判のBGM、カフェの雑音などをブレンドしてテンションや集中力を高める、という使い方も。他のスピーカーでBGMを流すとマイク経由で相手聞こえてしまうおそれがありますが、GENKI Waveformならマイクに音が入らないので心配不要です。
めちゃ汎用的な機能なので、工夫次第でいろいろできると思います
制約
片方の音源とは必ず有線接続しなければなりません。
プロジェクトページの書きっぷりでは、「マルチポイントペアリングかつ両方の音源から同時に音が鳴らせる」と勘違いしそうですが、そうではないので注意です。(ぼくも最初は勘違いしていました)
もちろんこれは悪いことばかりでありません。USB-A〜USB-Cケーブルでの有線接続ならGENKI Waveformケースの電池残帳を気にしなくてよくなったり、音源とGENKI Waveformケース間での音の遅延が発生しなくなったり、良い点もあります。
少なくともGENKI Waveformの主なユースケースである「ゲームコンソールと有線接続、スマホと無線接続」であれば問題にならないので、気にすることはないでしょう。
各モードの切り替え
おおまかなモード切り替えロジックは上記フローのとおり。
実際の挙動は、
- ケースにUSB-Cが挿されていない状態でケースのフタを開けると、完全ワイヤレスイヤホンモードになる
- ケースにUSB-Cが挿されると、ケース・イヤホン間とケース・音源間のBluetooth接続処理が並行で走る
- ケース・音源間が接続されなければBluetoothトランスミッターモード、接続されればデュアルストリームモードになる
と、そこそこ複雑です。
ちょっと覚えるまで時間がかかるかもしれません。
慣れの問題です
GENKI Waveformが気になった理由
ぼくは100%リモートワーク中。仕事のWeb会議に出席するときのデバイスは以下のとおり使い分けています。
- デスクではPCから出席(自分が画面投影したりカメラオンの場合)
- それ以外はiPhoneから出席(食事やトイレ、外出中の場合)
使っているワイヤレスイヤホンはShokz OpenComm。マルチポイントペアリング対応なのですが、時たま「音声」プロファイルが切れてマイクが通じなくなるので、その時だけBluetoothを再接続しています。
ここの利用方法には、2つの問題がありました。
- 不調時の切り替えが地味に面倒
- マルチポイントペアリングしても一度に再生されるのは片方の音だけ
なので、GENKI Waveformのデュアルストリームモードで両方と常時接続してしまえば全部解決するのでは?と考えたのです。
想定する接続系統と使い方は以下のとおり。こうすれば面倒な接続先切替をゼロにできそうです。
- PCとGENKI WaveformケースをBluetooth接続
- iPhoneとGENKI Waveformケースを有線接続
- 常時GENKI Waveformイヤホンを装着
- 基本はPCからWeb会議に出席
- 追加のWeb会議はiPhoneから出席
- デスクから移動しつつWeb会議に出るときは
- iPhoneとGENKI Waveformケースをセットで持ち歩き、iPhoneから出席
- デスクに戻り次第、PCとGENKI Waveformのペアリングが自動復活するので、PCからの出席に切替
- ついでに仕事中に音楽を聴いたり、Web会議中のこっそりBGMを流したり
実際の検証結果は「実際に使ってみた感想」セクションでお話します
GENKI Waveformレビュー
ここから先は、完全ワイヤレスイヤホンとしてのGENKI Waveformをレビューしていきます。
完全ワイヤレスイヤホン単体としても、電池の持ちやANC対応、音質面などかなりしっかりと作り込まれています。
外観・デザイン:上品
上品な色合いながら、少しメカメカしいデザインがシックです。
ゲーム用途となると虹色に光るものも一般的ですが、シックな雰囲気に仕上げているのは個人的には好みです。
重さ・大きさ:重量級
- ケース+イヤホン両耳:62.5g
- イヤホン片耳:7.0g
昨今の完全ワイヤレスイヤホンと比べるとかなりの重量級です。本体片耳で5g前後の機種が多いので、GENKI Waveformはその1.5倍くらい重いことになります。
とはいえ、たとえばBose QuietComfort Earbudsは本体片耳8.5gであることから、突拍子もなく重いわけではありません。
またこの重さには「電池の持ち重視」という理由があります。大きめのバッテリーを積んでいるため軽さは犠牲にしたと考えるべき。
なので設計の良し悪しというより「そういう設計思想のアイテムなんだ」と捉えるのが正しいと思います。
身長172cmの男性である管理人の手と比べても相当存在感があります。
持ち歩きに不便するほどではないものの、GaN素材の60W級ACアダプタくらいはあるので、相応にかさばると思います。
Bluetooth接続:接続先でコーデックが違う
Bluetooth接続は、ペアリングや再接続、接続の安定性含め、問題ありませんでした。
とはいえ注意すべき点があります。イヤホン本体とケースで対応しているコーデックが異なるのです。
- GENKI Waveformイヤホン:aptX Adaptive、aptX HD、aptX、AAC、SBC
- GENKI Waveformケース:AAC、SBC
これが影響してくるのはデュアルストリームモードです。ケースと有線接続する系統はaptX Adaptiveが使われますが、ケースとBluetooth接続する系統はたかだかAACになるため、音質や遅延に差が出ます。
音質や遅延にこだわりたい音源はケースと有線接続、そうでもない方はケースとBluetooth接続、と意識すると良いでしょう。
装着感:見た目よりも悪くない
装着感は、見た目のゴツさや重さの影響でイマイチそうに見えますが、実際につけてみるとそこまで悪くありません。
イヤホンのカナル部分がしっかりと耳の穴に入り込む形をしているのが理由でしょう。当然首を左右に激しく振っても落ちてくる様子がありません。
最初から装着されているイヤーピースではフィットしない場合、付属の8種類のイヤーピースから自分にフィットするものを選べば大丈夫です。
音質:ゲーム向けにチューニングされている
第一印象は、低音一直線だな、です。
音量バランスは低>>中>高。
ゲーム音楽と効果音の迫力や臨場感を最優先にチューニングされているのでしょう。低音の広がりや響きが良いので、爆発音や打撃音がやけにリアルです。ゲームだけでなく映画鑑賞にもマッチしそう。
ただ、音楽を聴くときはイコライザで調整を入れるほうが良いかもしれません。低音ボンボン系が好きなら良いかもしれませんが、そうでない場合はもう少し中高音のボリュームがほしくなると思います。
では中高音の音質ではどうかというと、ちょっと微妙です。ドライバが1DD+1BA構成である点から、中高音も十分ケアしている気持ちは見えるものの、中高音の魅力を売りにしたイヤホンに比べると、透明感やきらめき、見通しの良さは数段劣ります。
やはりゲーマー向けデバイスということで音楽鑑賞メインで使うにはちょっと物足りないかなという印象です。
効果音の後ろに流れるゲームのBGMを楽しむぶんには全く問題ないと思います
マイク:意外と音質が良い
マイクはイヤホンとケースそれぞれについており、ケースのボタン2度押しで使うマイクを切り替えられます。
音の特性はざっくり以下のとおり。
- 全指向性。集音性はそこそこ。それなりに雑音は入る
- cVc 8.0のおかげで自分が話すときだけ雑音は消える
- 総じて、音質はかなり良いほう。自分の声だけがクリアに聞こえる
- 集音性能が低い。自分の声が遠く聞こえる
- 音質の良し悪しはケースの配置に左右されるが、ケースの置き場所
- 総じて、あまり使いたいと思えない音質
ぼくの使った範囲では、ケース側のマイクが役立つシーンは思い当たりませんでした。
もしかしたらアイデアがあるかもしれませんが、試した限りでは「おまけ」機能として扱うほうが良いかもしれません。
ANC性能:優秀
性能は非公開ですが、体感では-38〜-40dBクラスでした。
カナル型の遮音性もあいまってノイキャン性能は十分といえます。
特に中低音をよく打ち消します。逆に高音は若干耳に残ります。
具体的な音の消え方は以下。完全なる静寂にはなりませんが、耳を澄まさなければ気にならない水準です。
- 2m後ろの金魚水槽のエアーポンプの「ブー」音が消える
- 隣の部屋で回る洗濯乾燥機の「ゴー」音が消える
- 50cm先のキーボード打鍵時の「カチャカチャ」音は少し聞こえる
電池の持ち:文句なし
イヤホン本体の連続再生時間は、
- ANCなし:14時間
- ANCあり:9時間
と超ロングライフ。
長時間のゲーミングだけでなく、1日中Web会議の日でも十分耐えられます。
ワイヤレス充電にも対応。便利さの面でも抜かりありません。
防水・防塵:IPX4
水しぶきには耐えられる程度の防水等級IPX4を備えています。
雨の中でのジョギング程度なら大丈夫かもしれませんが、水没には耐えられないので注意しましょう。
専用アプリ:開発中
本記事執筆時点(2022年7月22日)で、専用アプリはストア未公開。鋭意開発中とのこと。
先行でクラウドファンディングを行っていたKickstarterのプロジェクトページでは、
- ANCモード切替
- イコライザ設定
- 接続先の管理
- ファームウェアアップデート
に対応する、とされています。
今後に期待しましょう
保証:1年
クラウドファンディングのプロジェクトページに「安心の1年保証」と明記されています。
そこそこ高いアイテムなので保証がしっかりしていると心強いですね。
実際に使ってみた感想(仕事用途で)
記事冒頭でお話しした目論見どおり、以下のとおりデュアルストリームモードを構成して使ってみました。
- PCとGENKI WaveformケースをBluetooth接続
- iPhoneとGENKI Waveformケースを有線接続
- 常時GENKI Waveformイヤホンを装着
- 基本はPCからWeb会議に出席
- 追加のWeb会議はiPhoneから出席
- デスクから移動しつつWeb会議に出るときは
- iPhoneとGENKI Waveformケースをセットで持ち歩き、iPhoneから出席
- デスクに戻り次第、PCとGENKI Waveformのペアリングが自動復活するので、PCからの出席に切替
- ついでに仕事中に音楽を聴いたり、Web会議中のこっそりBGMを流したり
結果、たしかに仕事用途でGENKI Waveformは活躍できるけれど、ぼくの要件にはフィットしませんでした。
良かったところ・悪かったところ、という形式でそれぞれ話をしますと……
良かったところ
- 電池の持ちが圧倒的。一日みっちり使っても大丈夫
- 1日つけていても意外と重さが気にならない
- 思った以上にマイクの音質が良い
- BGM用途なら低音寄りの音質がちょうどいい(特に集中力を高めるとされるlo-fi hiphopと相性が良い)
バッテリーの持ちが良い完全ワイヤレスイヤホン兼ヘッドセットとして普通に使えるな、という印象です。
悪かったところ
- iPhone側に有線接続すると、iPhoneを持って移動する時にGENKI Waveformのケースがぶらぶらして邪魔。PCに有線接続するとiPhoneとケースの距離が離れすぎると通話できないためデスクに縛られる。帯に短したすきに長し
- Web会議にBGMをブレンドするだけなら、PCでWeb会議と音楽プレイヤーを両方立ち上げれば良い。用途の一部はGENKI Waveformを使わなくても実現できてしまう
- 接続系統が複雑で、慣れるまでに時間がかかりそう。かつ使い始めのセットアップも少し面倒
こだわったことをやろうとすると手間と便益のバランスが微妙かな、という印象です。
「仕事は必ずデスクでやる」「スマホ持ち歩きながらWeb会議に出ない」というルールで過ごすなら問題なかったと思います。
こんな人におすすめ
まとめ:刺さる人には激刺さる
総合評価:
オンリーワンな機能を持つ珍しいガジェットであるぶん、役立つユースケースはそれなりに絞られると感じました。
スマホとPCから、場所移動しつつ仕事のWeb会議で同時出席……というぼくのユースケースもそれなりにニッチだと思いますが、ちょっと方向性が違ったようです。
逆に「2つの音源を1つのイヤホンで同時再生」というワードにピンときたら人には、GENKI Waveformは突き刺さると思います。
そもそもクラウドファンディングってニッチなユースケースにマッチしたプロダクトを商品化する場所ですもんね
Not for meではありましたが、バッテリーやANCをはじめ完全ワイヤレスイヤホンとしての基礎力やデザイン性はばっちりなので、評価は★4としました。
本記事をお読みいただいてもし気になったなら、ぜひMakuakeのプロジェクトページをチェックしてみてはいかがでしょうか。
以上「GENKI Waveformレビュー | 2つの音源を同時再生できる完全ワイヤレスイヤホン」でした。