提供:mechkeys
キースイッチを「美しい」と形容するのは初めてかもしれません
キーボード関連製品を扱うmechkeysさまより、2023年夏発売の静音リニア軸Raw Coconut Latte Switchを提供いただきました。
先に結論をいうと、あらゆる側面でデザインと体験が統一されている美しい軸です。
ここまでプロダクトデザインが整った軸は初めてです。品質も良く、納得感と満足度がとても高いです。
適当な名付けがはびこる昨今のキースイッチ界隈に一石を投じる良プロダクトだと思います。
Raw Coconut Latte軸の主な仕様
- Type: Linear
- Material: POM
- Operating Force:45±10gf
- Pre Travel:1.8±0.4mm
- Total Travel:3.6±0.4mm
Raw Coconut Latte軸レビュー
それではレビューしていきます。
デザイン:まったり一色
ミルク多めのラテのような色。
全体的にまったりしています。
一色構成のキースイッチは初めてですが、統一感があっていいですね。目がチカチカしません。
落ち着いた色合いなので、いろんなPCBやキーキャップと組み合わせても落ち着いてくれそうです。
少し珍しい静音機構をしています。
通常、静音軸はステムの側面に静音用のシリコンを仕込むものですが、Kailh Raw Coconut Latteは
- 底打ち:ボトムハウジングの底にシリコン
- 戻り:トップハウジングの脇に緩衝用の金属板
が仕込まれています。
この機構が実際打鍵音と打鍵感にどう影響しているか、次節で詳しくお話します。
打鍵音・打鍵感:静かなトコトコ音。個体差はあるが上品
打鍵音は↑の通り。
言葉にすると「弱めのトコトコ」で、分解すると
- 底打ち:静か
- 戻り:少し音あり
- 上下動:少しシュコシュコ鳴るときがある
という感じ。静音性は控えめですね。
なお上下動のシュコシュコ音は、鳴る個体と鳴らない個体があります。
トップハウジング脇の緩衝用金属板とステムの擦れが音の発生源なので、金属板を曲げる加工の精度が関係しているのかもしれません。
ちゃんと測っていませんが、体感で10%程度でしょうか。
静音化機構の異なる複数の静音リニア軸で音を比べてみました。左から
- Durock Black Lotus(対照実験のため非静音)
- FEKER Ahponia Silent Pink(ステムにバウンス構造が仕込まれている)
- Outemu Silent Peach V2(ステムにシリコンが仕込まれている)
- Raw Coconut Latte(トップ・ボトムハウジングに手が入っている)
です。Raw Coconut Latte軸も十分静音化されているとはいえ、静寂さでいうとOutemu Silent Peach V2が勝ります。
一方で、打鍵感は優秀です。Raw Coconut Latteのほうが、ちゃんとキーを打ち込んでいる感があります。
特に底打ち。静音軸=ムニュっとした底打ち、というイメージをお持ちかもしれませんが、Raw Coconut Latte適度な反発感が保たれています。
理由はおそらく、ボトムハウジングの静音用シリコンがちょうどいい厚みに調整されていること。この調整、ボトムハウジングに貼る形式だからこそできる芸当なのかもしれません。
滑らかさはおおむね良好。ただルブ済の軸ほどではありません。
軸のブレは普通です。ステムが円形ボックスタイプだったり全体的にぴっちりしたデザインなのでブレも少ないのかな、と思いましたが、可もなく不可もなくでした。
総じて、こだわり順が
底打ち感>静音性>滑らかさ>ブレ
である人にフィットすると思います。
このくらいの音なら会社やカフェで使っても迷惑しなさそうです
耐久性:1億回の打鍵に耐える
踏みつけたりしない限り、単純計算で20年は使えると思います。
というか、ほとんどの軸ではこの数字5000万回とか8000万回です。1億回は始めて見ました。
保証:なし
メーカー保証はないと考えたほうが良いです。
今回レビュー依頼をいただいたmechkeysの商品ページでは明確な保証・返金規定が定められています。
英語ですが、買う前に読んでおくと良いと思います。
実際に使ってわかったメリット・デメリット
以上のレビューから、Raw Coconut Latteメリット・デメリットをまとめます。
メリット(良かった点)
- トコトコとした打鍵感
- 静音軸なのに底打ちがしっかりしている
- 一色構成。いろんなキーボードとあわせやすい
デメリット(悪かった点)
- 擦れ音が目立つ個体がある(体感10%ほど)
Raw Coconut Latteはこんな人におすすめ
まとめ:品質の裏に誠実さあり
総合評価:
今までいろいろな軸を使ってきました。その多くが、外観の色あいから安直に命名されていました。黒いから○○Black、桃色だから××Peach。要するに命名が雑なんです。
これ、買う側からすると名前から打鍵体験が想像できなくて。Force-Travel Diagramやスペックあれど、結局買ってみるまでわからず。売り手が圧倒的な情報強者なのです。
するとどうなるか。注目されやすい色と名前をつければ金のあるオタクは軸を無限に買うだろ?という魂胆の製品がはびこるのです。
ぼくは2022年中旬からAliExpressでキースイッチの製品情報を追ってきましたが、2023年からこの傾向が強まっています。果ては著作権侵害が疑われるものまで出てくる始末。そういうのに限って値付けもひどい。自キ界隈なめんなと言いたい。
この悪い傾向のさなか、Raw Coconut Latte軸は発売されました。ぼくも半信半疑でした。本当にこれはいい軸なのか。人柱になるつもりでした。
しかし実際に使ってみると、見た目と名付け、打鍵感、指先の感触、すべてが「Raw Coconut Latte」にマッチするのです。静かなカフェのゆるいまったり感。これぞプロダクトデザイン。
以上の背景を踏まえ、Raw Coconut Latte軸は軸単体の品質はもちろん、買ってから使うまでトータルでの満足感と納得感が高いプロダクトと評価します。なので★5としました。
Kailhは先駆者的な軸メーカーとしてそこらへん頑張っている印象があります。Deep SeaやWhaleもしっかりプロダクトデザインされていますし、なにより誠実ですよね。
買う人に正直に向き合う姿勢は評価したいですし、これからも頑張ってほしいですし、一人の自キユーザとしてKailhの新作を積極的に買っていきたいと思いました。
以上「Kailh&FL・ESPORTS Raw Coconut Latte軸レビュー | 統一感が美しい軽量静音リニア軸」でした。