新設計にチャレンジしたのはいいんだけど、さすがにこれは・・・
ちょっと珍しい静音機構の軸、LCET Dreamsea Silentを買ってみたのですが、あまりの耐久性のなさに実戦投入前にお蔵入りになりました。
正直おすすめできません。
それでも買いたいと思えるor興味を持った人が納得したうえで購入できるよう、記録に残しておこうと思います。
LCET Dreamsea Silentが気になった理由
静音機構が珍しかったからです。
これまでいくつもの静音軸を使ってきましたが、初めて見るステムの形状。
見た時点で耐久性が不安な形してるなと思っていたものの、実際使わないとわからないのが軸の世界なので、試してみたいなと思ったのでした。
LCET Dreamsea Silentの概要
- Shaft Type: 5pin linear Switch
- Material:POK POM
- Mechanical Life:About 50 Million Times
- Operation Force:35±5 gf
- Conduction Travel:2.0±0.2mm
- Total Travel:3.6±0.2mm
LCET Dreamsea Silentレビュー
それではレビューしていきます。
デザイン:優しい色+珍しい静音機構
外観は良いです。優しい色合い、LEDの光を拡散しやすい半透明のトップハウジング。
分解して、まず目につくのがステムの構造です。
側面に上下2本ずつ、左右それぞれ、合計8本の足・・・もといバンパーが生えています。
ここがフニャッとすることで打鍵時の衝突音をおさえるという寸法です。
ボトムハウジングにも工夫が。ステムのバンパーがぶつかる部分にスリットが入れられています。ここがバネの役割を果たします。
つまり、底打ち音はステムとボトムハウジングのあわせ技でケアしているのですね。よく考えられています。
一方、トップハウジングにはそのような工夫は見られません。
戻りの音はステムのバンパーだけで静音化するのですね。
全く新しい静音機構でワクワクしますが、ステム側面のとてもとても細いバンパーにかなり依存した設計なのが不安です
打鍵音:正常状態なら優秀。ただし・・・
手元の主役級のサイレントリニア軸と音を比べてみました。左から
- Outemu Silent Peach V2
- YUNZII Caramel Coffee
- Kailh&FL・ESPORTS Raw Coconut Latte
- LCET Dreamsea Silent(当レビュー対象)
です。
少しカサカサした音が鳴りますが、静音性は他と同等レベルです。
これは期待できるかも、と思ったのですが・・・
↑の動画のとおり、打鍵音に個体差があるんです。
緑がOKな個体、赤がNGな個体です。赤は戻りの音が静音化されていません。
なぜだろう、とNG個体を調べていくと、衝撃の事実が・・・
耐久性:紙。正常状態でいられる時間はわずか1分
赤のNG個体を開いてみると、なんとステムのバンパーが一部折れていました。
これ、届いて装着した直後ですよ。
おかしいので全固体の打鍵音をチェックしたところ・・・
なんと、購入した40個のうち6個がNG(戻りの音が静音化されない状態)でした。
ためしにNG個体を分解したところ、
ステム上部のバンパーがボッキボキに折れていました。
ひどいものだとバンパーが2本ともなくなっていて、真ん中の突起しか残っていなかったり。
不良品率があまりにも高すぎます。初期不良だとしたらおかしいレベル。
そこで、残ったOK個体をASDFに装着してカチャカチャ打鍵してみたところ、
- 30秒くらいしたら徐々に戻りの音がうるさくなってくる
- 1分たったら全個体で戻りの音がうるさくなった
という結果に。
テストに使った個体を分解してみたところ、バンパーがことごとくひしゃげておりました・・・。これ1分前までOKな個体だったんですよ。
つまり、
- 40個中6個は、輸送中の衝撃でバンパーがボッキボキになった
- その原因は、ステム上部のバンパーがあまりにも衝撃に弱いことである
ということ。
これは明確に強度設計がダメでしょう。そもそもちゃんと耐久テストしてるかも怪しいです。
もちろん、セミサイレント軸として割り切れば使えるかもしれません。でもこの調子だと、遠からず真ん中の突起部分すらポキっと折れてステムがトップハウジングからぴょーんと飛び出してくるでしょう。だって戻りの衝撃が縦横1mmくらいの小さな突起に集中するんです。それも何百回・何千回も。
この時点で実戦投入に値しないと判断したので、打鍵感はレビューしていません。
スペック表に書いてある「Mechanical Life:About 50 Million Times(約5000万回の打鍵に耐える)」って一体なんなんでしょうね
保証:え?
保証というよりリコールで回収してほしいくらいです。
実際に使ってわかったメリット・デメリット
以上のレビューから、LCET Dreamsea Silentのメリット・デメリットをまとめます。
メリット(良かった点)
- 正常状態であれば静音性は高い
デメリット(悪かった点)
- 正常状態でいられる時間が1分くらい。それ以上使うと静音機構が半壊し、戻りの音がうるさくなる
LCET Dreamsea Silentこんな人におすすめ
まとめ:まったくおすすめできない
総合評価:
買ってはいけません。
軸を含む自作キーボードを仕事道具として捉えているぼくにとって、耐久性が紙な時点でアウトです。
設計上のチャレンジは称賛に値しますし、将来もっと硬くて潤滑性の高い新素材が出た時には本作向けの金型が選択肢になる可能性があります。
ただ、現時点では買わない方が賢明です。
以上「LCET Dreamsea Silentレビュー | 買ってはいけない。使って1分で静音じゃなくなる」でした。
なんとも残念な結果に終わりましたね。ご愁傷さまです。
コメントありがとうございます。
人柱たるレビュワーですし、こういうこともあります。。