提供:TP-Link
TP-Link様のご厚意で、2022年4月発売のTP-Link Deco X50をレビューさせていただけることとなりました。
メッシュWiFiで知られるDecoシリーズ。最新版のX50は、Decoシリーズのいいとこ取りをした正統進化版というポジションのものです。
具体的には、Decoシリーズの利便性は維持しながら、
- 必要十分な通信速度
- AIが全自動で通信を最適化
- ギガビットポートが3つに増設
と進化しています。
とはいえ、
- 「実際の通信速度ってどうなの?」
- 「AIって具体的になにがどうなるの?」
- 「ギガビットポートが増えてなにが嬉しいの?」
あたりは気になるポイント。
本記事では、これらを中心に検証していこうと思います。
わが家がこれまで使っていたDeco X20とも比較します
TP-Link Deco X50の概要
注目ポイント
必要十分な通信速度
Deco X50の通信速度は「AX3000」。
電波帯ごとの通信速度の合計値がだいたい3000Mbpsになるものです。
- 5GHz:2402Mbps(802.11ax, HE160)
- 2.4GHz:574Mbps(802.11ax)
2022年現在、一般家庭向けインターネット回線が大体1〜2Gbps=たかだか2000Mbps。
なので、多くの人にとって3000Mbpsで必要十分といえます。
(逆にこれ以上のルーターを買ってもインターネットは早くなりません)
AIが全自動で通信を最適化
TP-Link公式サイト解説ページにいろいろ書いてありますが、要するに「AIメッシュ」とは、メッシュWiFi全体の通信の安定性を向上させるしくみです。
具体的には、
- Decoに接続中のデバイスやDeco間の通信速度や信号強度
- 各Decoユニットの処理負荷状況
- 各Decoユニットの型番・スペック
をインプットに、
- デバイスが実際に接続するDecoユニットの自動切替
- 接続先Decoユニットのスムーズな切替
- Decoユニット間の通信ルートの自動最適化
などを行い、結果として
- 周辺環境の変化に強い
- スマホなどの移動機で通信が途切れにくい
などの点で安定した通信環境が実現されるもの。
なお、
*AIアルゴリズムで適用される全ての情報は、Decoデバイスにローカル保存のみされるため、クラウドにアップロードされることはありません。
だそうです。
参考 AI-Driven Mesh | TP-Link 日本
ギガビットポートが3つに増設
従来のDecoシリーズは、ギガビットポートが2つのみ。
しかし2つだけだとNASの増設が困難でした。
NASなど有線接続が必要なデバイスは、親機になるDecoに繋げなければならないからです。
- 1つはインターネット回線に
- 1つはNASに
しかしギガビットポートが3つに増えたことで、
- 1つはインターネット回線に
- 2つはNASに
となるため、NASの増設がかんたんにできるようになります。
仕様・スペック
仕様は公式サイトのものが見やすいでそちらをどうぞ。
参考 Deco X50 | AX3000メッシュWi-Fi 6システム | TP-Link 日本
公式サイトで他シリーズとのスペック比較もできます。主要なDeco Xシリーズの比較表はこちら。
参考 製品を比較: Deco X20 vs Deco X60 vs Deco X50
TP-Link Deco X50レビュー
それではレビューしていきます。
外観・デザイン:MUJIのような白
シンプルな白の円筒形に最低限の印字類。
無印良品を思わせるたたずまいです。
なおLEDの明かりは後ほど紹介する専用アプリで点灯させないよう設定可能です。
重さ・大きさ:わしづかみできるサイズ
ルーターとしては小ぶりなほうかなと思います。
実際に棚に置いてみると、ちょこんと座っている印象を受けます。
初期設定や管理:アプリ完結で簡単
TP-Link Deco
TP-LINK無料posted withアプリーチ
Deco X50の初期設定やWiFi管理には、「TP-Link Deco」という専用アプリを使います。
アプリの作りが秀逸で、必要な設定や管理が一発で終わります。
具体的には以下。
初期設定
箱や説明書に、「初期セットアップはDecoアプリから」としか書いていません。
でも心配無用。アプリの指示にしたがえばセットアップが完了するようにできています。
流れはざっくり以下。
- TP-Linkにユーザ登録する
- Deco X50をコンセントとLANポートにつなぐ
- Deco X50が自動検出される
- WiFiのSSIDとパスワードを設定する
- 必要に応じて、その他オプションの指定する
Decoの追加
- 追加するDecoの電源を入れる
- 「Decoを追加」する
以上です。
ネットワークスキャン
- ネットワークセキュリティ設定不足のチェック
- ネットワークパフォーマンスの最適化(電波混雑の解消)
を行なえます。
ネットワークパフォーマンスの最適化は基本「AIメッシュ」にお任せですが、どうしても手動でやりたい場合はアプリから行えるようです。
その後の設定変更や管理
- Deco X50自体の設定を変える
- WiFiのSSIDを増やす・減らす
- ゲストネットワークを作る・消す
- 接続中のデバイスを強制的に切断する
- 特定のURLやIPアドレスへのアクセスを遮断する
など、一通りの制御もアプリから可能です。
通信範囲、通信性能:単体でも有能、複数で死角なし
- 約70平米のマンション
- インターネット回線はマンション型の1Gbps
- LANケーブルはCat 5e(1Gbpsまで対応)
- 有線接続の実測値は最大600Mbps
- 15〜20個のデバイスが常時通信中
- WiFi 6対応スマホで測定
以下3パターンでテストしてみました。
- 親機Deco X50のすぐ近く
- 親機Dexo X50から遠い場所(子機なし)
- 親機Dexo X50から遠い場所(子機あり)
結果は・・・
親機Deco X50のすぐ近く
有線接続とほぼ変わらないパフォーマンスが出ました。
これは、Deco X50の処理性能自体がボトルネックにはならないことを意味します。
親機Dexo X50から遠い場所(子機なし)
かなり電波の届きにくい場所でも安定して100 Mbps 以上出ています。
アンテナの性能が良いのかビームフォーミングが効いているのか。
いずれにせよ、電波が弱くても通信速度はそこそこ確保してくれるようです。
親機Dexo X50から遠い場所(子機あり)
メッシュWiFiということで、真ん中に子機を挟んだらどうなるのか、測定してみました。
結果、ダウンロードが最大300Mbpsまで改善。2倍の速度が出ています。
単体での電波到達範囲を考えると、大体の家庭では2個パックで大まかカバーできるのではないでしょうか。
AIメッシュの効果:70㎡の3LDKでは実感できず
最初に注意ですが、AIメッシュの効果のみを真水で検証できているわけではありません。
理由は2つ。
- Deco X50にAIメッシュオンオフ切替機能がない
- 通信速度を常時計測する機材がわがやにない
そのため妥協案として、
- AIメッシュなしのDeco X20で組んだWiFi
- AIメッシュありのDeco X50で組んだWiFi
の2つの構成に対し、通信速度や安定性について、
- 気づいたベースでGoogleスピードテストを走らせた結果
- 動画再生時のラグの有無、頻度
- スマホを持って屋内を移動し、接続先のDecoが切り替わったときの通信断の有無
で比較しました。
結果、平均の通信速度が上がったものの、動画再生時のラグには変化はなく、接続先切替時の通信断は約70㎡のわがやでは効果を実感できずでした。
詳しく言いますと・・・
通信速度
具体的には、子機側のDecoへ接続された状態でGoogleのスピードテストを行ったときの平均的な通信速度が
- AIメッシュなし:約250Mbps
- AIメッシュあり:約350Mbps
と、AIメッシュありのほうが高く出ています。
ただ、これは積んでいるアンテナのグレードの違いによるものかもしません(X50のほうが良いアンテナを積んでいます)。
動画再生時のラグ
子機側のDecoへ接続されたリビングルームのFire TVで4Kコンテンツを流してみました。
ラグの発生頻度は変わらずです。そもそも4Kを配信する側のサーバーが混んでるのではないか?と感じるケースがしばしば。
接続先切り替え時の通信断
変わらずです。正直、効果は実感できませんでした。
そもそもわがやは約70㎡のマンション。Deco X20やX50なら、親機単体でも部屋の端から端まで電波が届いてしまいます。
なので、AIメッシュで切替がスムーズになっていたとしても、そもそも気づきにくいんだと思います。
約70㎡のマンションにAIメッシュはオーバースペックだったのかもしれません
ギガビットポート:3つに増加。用途が広がる
ギガビットポートが3つになったことで、Deco X50の親機に
- インターネット向けLANケーブルが1本
- NAS向けLANケーブルが2本
挿せるようになりました。
現時点で、わがやでは秘密分散クラウドストレージ「Cubbit Cell」をDeco X50に有線接続して使っています。
現時点で1つポートが余っている形ですが、もし今後宅内NASを立てることになった場合でも、Deco X50なら大丈夫。
ギガビットポートは多ければ多いほど安心なのです。
安定性・耐久性:心配なし
2週間動かし続けて、一度も不具合は起きませんでした。
目立った通信断もありません。
WiFiルーターは電気や水道みたいなものなので、この安定感は頼りになります。
ちなみに、これまで何台かTP-Linkのルーターを使ってきましたが、故障したことは一度もありません
保証:3年の長期保証
Deco X50には、標準で3年間の長期保証がつきます。
WiFiルーターは長く使うものですし、Deco X50は2個パックで2万円台と安くはないため、保証が長いと安心です。
(参考):Deco X50とDeco X20の比較
詳細なスペック比較はTP-Link公式サイトの製品比較ページが一番見やすいのでそちらをどうぞ。
かいつまんでいうと、
- X50のほうが高性能で軽い
- X20のほうが安い
になります。
X50のほうが高性能で軽い
大きさはX20もX50も同じです。重ねてもぴったり。
ギガビットポート数が多い点もX50に軍配が上がります。
ちなみにX50のほうが軽い理由は、アンテナの数が少ないからです。
- X20:1×1 MU-MIMOが4基
- X50:2×2 MU-MIMOが2基
上記構成、結果としてのストリーム数は同じである一方、アンテナ1本あたりの通信速度は2×2 MU-MIMOのほうが高速になります。
- X20:AX1800
- X50:AX3000
なので、同じ大きさでもX50のほうが軽く、かつ高性能というわけです。
X20のほうが安い
とはいえ、値段はX20のほうが安いです。
ショップや時期によりますが、おおよその価格帯は
- X20:2万円弱〜前半
- X50:2万円中盤〜後半
と、開きがあります。
価格差はだいたい5000円前後と考えて良いでしょう。
判断ポイント
自宅のインターネット回線速度が判断基準になります。
もし1Gbpsなら、AX1800のDeco X20で十分です。AX3000のDeco X50だとスペック過剰。
もし2Gbps以上である、または今後の増速を見越すなら、AX3000のDeco X50を選ぶべきです。AX1800のDeco X20だとルーターがボトルネックになります。
Deco以外の機種を選ぶときも、自宅のインターネット回線速度とAX〇〇の数字を比較すると良いです
実際に使ってみた感想
2週間、自宅のインターネットをDeco X50×2に切り替えてみました。
良かったところ
- 一切の途切れなく安定稼働している
- Decoアプリが相変わらず使いやすい
- 前作と比較し、通信速度のベースが上がった
- 本体が軽くなり、高い場所に置きやすくなった
通信速度や安定性、管理アプリの使い勝手などベースとなる良いところはそのままに、高性能かつ軽量化された点は高評価です。
悪かったところ
- インターネット回線が1Gbpsだとオーバースペック
- 70㎡程度だとAIメッシュはオーバースペック
Deco X50が悪い、というより、上記環境だと「AIメッシュ搭載のAX3000級メッシュWiFi」なDeco X50はオーバースペックなようです。
自宅環境が上記に近い場合、前作のDeco X20のほうがフィットすると思います。(発売から日がたって価格もこなれてきていますし)
X50のAIメッシュが効果を発揮するのは、70㎡以上のマンションまたは2階建て以上の戸建て、とかになりそうです。
TP-Link Deco X50こんな人におすすめ
まとめ:実力発揮には環境を選ぶ
総合評価:
順当に進化したちょうどいいバージョンのDecoです。
Decoシリーズの良いところは引き継ぎつつ、通信速度や安定性を高める工夫が盛り込まれています。
とはいえ、インターネット回線速度や自宅の広さによってはオーバースペック。特に普及価格帯の回線速度や家の広さでは効果が見えにくいので、★-1としました。
単にメッシュWiFiを組みたいだけなら、価格がこなれたDeco X20も選択肢に入れると良いかなと。
以上「TP-Link Deco X50レビュー | AI搭載も効果は限定的?利用者の環境を選ぶメッシュWiFiシステム」でした。